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組織にはなぜ多様性が必要なのか『多様性の科学』

Book Review Work

やまだゆう(@yamaday0u)です。

今回は久しぶりの書籍紹介です。

取り上げるのは『多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織(マシュー・サイド)』です。

本書は所属する人々の多様性が組織の問題解決力を高めてくれるという観点で様々な事例に触れながら、多様性がもたらす力を説明しています。

まずは簡単に本書の内容をまとめてみます。

この記事の内容

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結論

いきなりですが、本書でぼくが理解した結論がこれです。

「異なるバックグラウンド、ものの見方・考え方をする人たちが集まることで、チームとしての視野が広がりパフォーマンスが上がる(集合知)」

本書でキーワードとしてよく出ていたのが「集合知」です。

集合知とは

本書で「集合知とはなんぞや」ということはビシッと定義しているところは見られなかったのですが、上記の太字にした文のとおりかな、という風に僕は解釈しています。

もっと簡単にいえば、個人の経験や能力、知恵である「個人知」を集団として積み上げたのが「集合知」です。

なぜ集合知が求められるのか

現代社会の問題が複雑すぎるため、個人ではなく集団で解決していく必要があるからです。

個人あるいは似たような個人知を持つ少数人で現代社会の難題を解決するのが困難になっています。

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多様性の種類

高い集合知を得るには集団・組織の中の高い多様性が欠かせません。

ただし多様性とは一口に言っても、その種類はいくつかあります。

人口統計学的多様性

性別、人種、年齢、信仰などの違いは、「人口統計学的多様性」としてよく分類され、皆さんが「多様性」と聞いてよく思い浮かべるのがこの人工統計学的多様性でしょう。

本書では2001年9月11日に起きた「9.11」と呼ばれたテロをCIAはなぜ未然に防ぐことができなかったのか、その一因としてCIAの人種の偏り、つまり人口統計学的多様性が乏しいことを挙げていました。

当時のCIA職員は中流階級出身の白人・男性・アングロサクソン系・プロテスタントという特徴に偏っていたのです。

認知的多様性

もう一つ挙げられる多様性が、ものの見方や考え方が異なる「認知的多様性」です。

本書では主に「認知的多様性」について検討しています。

先述の「人口統計学的多様性」が高いほど、この「認知的多様性」が高くなる事が多いです。

人としての背景が異なればものの見方や考え方が異なりやすくなるのは想像しやすいですよね。

多様性を妨げるもの

つづいて組織の多様性を構築することやパフォーマンスを上げることを妨げてしまう要因について挙げていきます。

無意識のバイアス

無意識のバイアスは、自分では気づかないうちに持っている偏見や固定観念を指します。

この例として、1970年代のアメリカのオーケストラの例を挙げています。

当時は団員のほとんどが男性で、入団審査をする側が「一般的に見て、男性のほうが演奏がうまい」という思い込みがありました。(当人たちは「実力主義による採用」であると自負していた)

ところが、演奏者をカーテンで仕切ってオーディションをしてみたところ、以下のようになりました。

「女性演奏者の1次審査通過率は1.5倍に上がり、最終審査通過率は4倍にも達した。それ以降、主要なオーケストラにおける女性演奏家の割合は5~40%近くにまで増えている」
(『多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織(マシュー・サイド)』)より引用

単純に演奏という実力だけで審査したところ、男性優位のバイアスが浮き彫りになったわけですね。

権威的なリーダー

集団におけるリーダーに権威がありすぎるとメンバーが意見を出しづらくなり、集合知が発揮されにくくなるという状態です。

たとえば飛行している航空機内で機長はもっとも権威ある立場です。

1978年にアメリカで起こった航空機の墜落事故は、まさに権利的なリーダーが原因で起きました。

通常であれば、着陸のために車輪が下りてロックされると点灯するランプが付かないというトラブルがありました。直前に「ドン」という音もありました。

車輪がロックされていることを推測できる別の方法があり、クルーたちはそれを確認し「車輪は正しくロックされていると見ていいだろう」と答えを出しました。

しかし機長はそれでは確信できず、乗客にリスクを負わせるわけにはいかないと、問題はないか確認するため旋回を続けました。

結果として燃料切れによる墜落につながり、10人が亡くなるという大惨事になりました。

このとき、機長に権威がありすぎてクルーたちが率直に意見することをためらってしまったのです。

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多様性に対する理解を改める

これまでぼくは、多様性について考えるとき、欧米人やアジア人、アフリカ人などの「人種的多様性(=人工統計学的多様性)」を前提に置いて考えてしまっていました。

ですが本書を読んでいくうち、多様性とは必ずしも「人種的」多様性だけを指すのではなく、更に前提として「個人の多様性(=認知的多様性)」があるのだと理解し直しました。

人口統計学的多様性は認知的多様性を担保するようなもので、多様性が高く、強い組織を作りたいのであれば、認知的多様性をより重視すべきだと思います。

また、日本という人種的な多様性が比較的乏しい国の中では、人口統計学的多様性でなく認知的多様性のほうが汎用的で実践しやすいと思います。

(Gerd AltmannによるPixabayからの画像)

アクションプラン

自分が組織の多様性を構成する一員となるためには「自分の意見を表明すること」が重要だと学びました。

言葉にしてみると、社会人として・大人として当たり前だと思えることですが、意識しないと実践するのは案外難しいのではないでしょうか。

上司に忖度して異なる意見を言えなかったり、自分の知らない分野の話だからと会議で発言しなかったりしたことある人は少なくないはずです。

誰かに相談するとき、会議に出席するとき、必ず自分の意見を表明できるようにしていきたいですね。

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トップ画像:OpenClipart-VectorsによるPixabayからの画像

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